residual agricultural chemicals


1. ニュージーランド(以下NZと表記)政府による農産物の残留農薬検査の一つで、はちみつからグリホサートが検出されたことが、一部メディアで話題になっています。そうしたメディアでは「発がん性がある!」という大きな見出しをつけ、読者・視聴者や広告主の注意を惹こうとしています。

この検査結果については、2020年7月にテレビで取り上げられ、その後日本では主にYahoo Newsで拡散されました。残留農薬検査の結果が最初にNZの第一次産業省(以後MPIと表記)のウェブサイトで公表されたのはテレビ報道の5か月も前のことで、それまではこの残留農薬の検査結果は、活字メディアには取り上げられていません(註1)。

 

2. テレビジョンNZ(NZの国営放送)はこの話題を二夜連続で放映しました。二番目の報道は、カンタベリーに本拠地がある種苗会社が製造した「グリホサート・フリー」のはちみつの広告に酷似しているように思われました。(Yahoo Newsはこの二つ目の報道については気づいていなかったようです)。


TVNZ1のトーマス・ミード記者。グリホサート検出マヌカについての、自身の二部構成番組の第二部で、ピュリティ・ブランドのマヌカを「グリホサート・フリー」商品として紹介している。TVNZ1ニュース、2020年7月27日放映。


3. NZでは、はちみつをめぐる規制が二つあります。一方はNZ国内販売用のはちみつに適用されるもの、もう一方は輸出用のはちみつに適用されるもので、こちらは国内販売用に比べるとはるかに厳しい基準が設けられています。グリホサート残留が検出された検査の対象とされていたのは国内消費を前提とするはちみつに限られており、輸出用のはちみつは対象とされていませんでした。


4. NZで運営されるオンラインストアでは、国内消費用のはちみつ、つまり輸出用の厳しい基準を満たしていないはちみつであっても、宅配便を利用することで、日本から個人輸入することが可能です。このようにして小口で日本に持ち込まれるはちみつには、販売を目的として大量に輸入する際に必要とされる、日本の税関や検疫所への書類の提出は求められません。


5. こうしたNZのオンラインストアの一つが、輸出用はちみつで定められたグリホサート量の8倍の残留があるはちみつを、まとめて一度に船便で日本に送ったのです。これは、従来は注文ごとに空輸していたのが、新型コロナウィルスの蔓延により、NZ-日本間のフライトが減便されたことに伴う措置でした。検疫で、この(本来輸出用ではなかった)はちみつの残留農薬量が判明したことをきっかけとし、厚生労働省はNZから日本に輸入されたはちみつの全量検査を義務づけました(註2)。

6.ところが皮肉なことに、輸出基準を満たさないはちみつを日本に送ったこのオンラインストアは、NZの企業ではありませんでした。両国にオフィスを持つ、日本の企業だったのです。ただし、このケースが報じられる前後を問わず、NZの企業から空輸された小口貨物のはちみつからも、厚生労働省が定めたグリホサート残留基準値(はちみつ1kgあたり0.001mg未満)を超えるものが見つかっています(註3)。

 

7. 深刻な問題はNZ側にあります。MPIでは輸入農産物について、日本の厚労省のような無作為抽出検査を行っていません。また輸出に際し、はちみつ中の残留グリホサート最大値(MRL)は1kgあたり0.01mg未満という、日本の法を遵守する旨の証明の提出も義務づけていません(註4)。


8. この農薬汚染された輸入はちみつと、食品衛生法に違反する食品に対する原則主義的な対応についてのニュースは、残留農薬等について無頓着であったMPI当局(と、全部とはいえないにせよ、やはりぼんやりしていたはちみつパッキング会社)をたたき起こす警鐘となりました。さらに、日本がNZ以外の国(特にアルゼンチンとカナダ)から卸用に大量輸入しているはちみつについても、残留農薬に関する懸念が抱かれるようになりました。このような懸念は、日本の消費者保護の強化につながるでしょう。


9. また、グリホサート残留が話題になったことで、NZの科学研究所が最先端の検査設備に投資を始めたことも、よい知らせだといえるでしょう。例えばページ上部右側の写真に見られるように、アナリティカ・ラボラトリーズは現在、1kgあたり0.004mgという微量の化学物質でも検出できます。

 

10.  NZは、日本・オーストラリア・カナダ・合衆国をはじめとする農業国と同じく、各種農薬を使用しています。有機農業の楽園ではありません。

11. さらに言えば、上記各国と同じくNZ政府は、グリホサートは発がん性物質であると考えられる、という国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)の見解に同意していません。背景情報はこちらです。(註5a 5b)                       


12. 発がん性物質であるかどうかはさておき、NZ産はちみつにグリホサートそのほかの農薬残留はあってはなりません。NZは、自国産のはちみつが「純粋」だと宣伝しながら、「この程度の農薬残留なら食べても安全です」と公言することはできません。ところが、残念ながらこれこそが、NZ政府の公式の見解なのです。

 

13. グリホサートが検出されたNZ政府の検査では、グリホサート以外に474の農業用化学物質(殺虫剤、防かび剤、環境汚染物質)について分析が行われました。しかしグリホサート以外の化学物質は検出されませんでした。


14. グリホサート残留問題が取り沙汰される以前から、弊社へのはちみつ供給元各社は、グリホサート(除草剤)およびネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)の残留について、無作為抽出検査を実施していました。弊社は、はちみつの製造からパッキングまでを自社で行っている製造元から直接輸入しておりますので、これまでも自信を持って残留農薬ゼロの商品をお届けしてまいりました。

15. JCIが取り扱うはちみつは、グリホサート残留検査結果を閲覧できるようにしています。これまでに販売済のバッチ、および現在販売中のバッチすべてについて閲覧が可能です。以下のリンクからPDF形式でダウンロードできます。モソップからはじまり、弊社へのはちみつ供給元ごとに頁を作成しています。        

 

モソップハニー

タヒ・エステート

オヌク

ハニープロダクツ

( 2021.9.27)



1. New Zealand National Chemical Residues Programme Report

Results for agricultural compound residues in honey

New Zealand Food Safety Technical Paper No: 2020/02 | by New Zealand Food Safety

ISBN No: 978-1-99-000880-1 ISSN No: 2624-022X | January 2020

2. 輸入食品に対する検査命令の実施 (ニュージーランド産はちみつ、その加工品)

 令和3年1月08日(金)

厚生労働省 医薬・生活衛生局・食品監視安全課輸入食品安全対策室

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15942.html

3. 厚生労働省は、NZ産はちみつのうち6種が、食品衛生法に違反していることを発表したこれらのはちみつからグリホサートが検出されたことによる。

(2020.11.18 | 2021.1.8 | 2021.2.5 | 2021.2.8 | 2021.2.24 | 2021.3.10)

MHLW has reported six NZ honey violations of the Food Sanitation Law due to the detection of glyphosate (2020.11.18 | 2021.1.8 | 2021.2.5 | 2021.2.8 | 2021.2.24 | 2021.3.10)

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/ihan/index.html

4. 08/035 Contaminant Requirements for Bee Products for Export

ANIMAL PRODUCTS ACT 1999 | GENERAL REQUIREMENTS FOR EXPORT

5.(a) 国際がん研究機関(IARC、International Agency for Research on Cancer)のレポートは2015 年3 月に出版されました。

https://www.iarc.who.int/featured-news/media-centre-iarc-news-glyphosate/

(b)食品安全情報(化学物質)No. 20 / 2020 (2020.09.30)

国立医薬品食品衛生研究所・安全情報部

http://www.nihs.go.jp/index-j.html