common fallacies


1:マオリ(ニュージーランド原住民)の人々は何世紀にもわたり、
健康のためマヌカはちみつを利用してきた。

 

事実ではありません。

ニュージーランドにもとから棲息していたみつばちは、マヌカみつを集めません。
マヌカはちみつが初めてニュージーランドで作られたのは、オーストラリアを経て
ヨーロッパミツバチが持ち込まれた後の1839年です。

 

したがってニュージーランドのマヌカはちみつの歴史はせいぜい170年あまりです。
さらにヨーロッパミツバチが持ち込まれてからも、マヌカはちみつが商業的に生産
されるまでに30年の年月を要しています。例えばニュージーランド最大手に
数えられるパッキング会社のエアボーンが、マヌカ単独のはちみつを売り出したのは
なんと1985年になってからのことでした。

 

とはいえマオリの人々がマヌカの樹皮や葉、樹液や実の莢(さや)を病気の治療薬と
して用いていたことは、遅くとも1840年代以降、ヨーロッパからの入植者が残した
記録にたくさん見うけられます。ニュージーランドのインコが寄生虫を駆除するのに、
マヌカの樹皮や葉を利用していたという記録も残っています。


2.マヌカはちみつには抗ピロリ菌作用がある。

 

誤解を招く主張です

1994年、マヌカはちみつが生体外でヘリコバクター・ピロリ菌(H.Pylori 以後ピロリ
菌と表記)を抑制したという発見が発表されました。(1)
ただしこの抗ピロリ菌作用が生体内で再現されたという記録は見あたりません。

 

しかし、生体内での抗ピロリ菌作用の再現に失敗した臨床研究は少なくとも二つ存在
します。一つは1994年の実験を行った研究者らによるものですが、この失敗例は
公表されませんでした。

 

もう一つは英国王立コーンウォール病院消化器科が行った1999年の臨床研究です。
この研究の結論は「マヌカはちみつはピロリ菌根絶の役には立たない。もしはちみつが
消化不良に効果があるなら、ピロリ菌には効果がない」。(2)

(ピロリ菌は胃潰瘍の原因となることがあり、胃潰瘍は胃癌に変化しうる)

 

[1] Journal of Royal Society of Medicine. 1994 Jan; 87:644. Susceptibility of Helicobacter pylori to the antibacterial activity of manuka honey. Al Somal N, Colely KE, Molan PC, Hancock, BM.

[2] Journal of Royal Society of Medicine. 1999 Aug; 92:439. Manuka honey against Helicobacter pylori. McGovern DPB, Abbas SZ, Vivian G, Dalton HR.


3. マヌカの木はニュージーランドにしかない。

事実ではありません

 

 「マヌカ」は学名Leptospermum scoparium(フトモモ科ギョリュウバイ)という木の
マオリ名です。この木はオーストラリア南西部(ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州)およびニュージーランド全土に自生しています。オーストラリアのフトモモ科の木はおよそ85種類あり、花蜜に強い抗菌力を持つものもあります。一例が
Jelly Bush 「ジェリー・ブッシュ」とも呼ばれるLeptospermum polygalifoliumです。


4. マヌカはちみつを金属製スプーンで食べてはいけない。

事実ではありません

 

マヌカを金属製スプーンで食べてはいけないというのは本当か、という問い合わせを
いただきました。この質問がでてきた背景には、マヌカの抗菌効果が減るので金属製
スプーンを使用しないほうがよいとのアドバイスを行う一部の健康食品店の存在が
あると思われます。

このアドバイスの理由として、はちみつの酸(註1)によりスプーンの金属が
腐蝕され、この反応がはちみつに影響することが挙げられています(はちみつの酸度は
オレンジやレモンと同程度です)。もしはちみつを数週間、金属の上に放置すれば、
表面にはっきりとわかる小さな腐蝕が現れるかもしれません。

しかしこのような腐蝕が、はちみつとスプーンが接触しているわずかな時間内に
起きることは考えられません。さらに、スプーンやフォークの大半は、酸により腐蝕が
生じるアルミや銅製ではなく、耐酸性のステンレス製です。はちみつを耐酸性のない
金属容器で保存すべきではないことは事実ですが、金属製スプーンで食べては
いけないというのは事実ではありません。

 

[1]はちみつにはアミノ酸・有機酸・脂肪酸・芳香族アミノ酸が含まれています。以下のリンクで、「はちみつの塩基性度と酸」をご参照下さい。www.nhb.org.


5. マヌカは虫歯を予防する

 

マヌカが虫歯予防に効果があるという説は、マヌカ研究の父と言われる
ピーター・モランPeter Molanによる論文の、ほんの一部分が拡大解釈されたもの
と思われます。

 

モランは2001年に発表した論文[註1]中で、マヌカを「歯周病、口腔癌その他の
口内疾患」の治療に用いる可能性について言及しています。ただしこれはマヌカに
虫歯を予防する効果があるかもしれないという意見にすぎず、モランはこの件について
エビデンスのある結論を示していません。

 

むしろロチェスター大学医学センターの研究では、はちみつと炭酸飲料および砂糖は、
ほぼ同程度で虫歯の原因となることが示されています[註2]。最後に、動物(人間に
飼育されているペットを除く)のなかでほぼ唯一虫歯になるのが、はちみつを大量に
食べるクマであるということも申し添えておきましょう。

 

[1] General Dentistry. November-December 2001. p. 586. The Potential of Honey to Promote Oral Wellness. Peter C. Molan.

[2] Pediatrics. October 2005, Vol. 116 / 4. Comparison of the Cariogenicity of Cola, Honey, Cow Milk, Human Milk, and Sucrose. William H. Bowen, Ruth A. Lawrence.