マヌカはちみつ価格のコストを押し上げる要因を理解するにはまず、ニュージーランドの養蜂業以外の第一次産業、はっきり言えば酪農業について理解する必要があります。
ニュージーランドは人の数よりも羊の数のほうが多いという有名なジョークがありますが、乳牛の数も人の数より多いのです。
ニュージーランドの乳牛数は、1993年から2013の間に84パーセントも増加しました。2013年の乳牛総数は4,784,250頭です。同時期、牧場面積も57パーセント増加し、1,677,395ヘクタールとなりました。
マヌカの木々が伐採
つまりこの20年の間に607,500ヘクタール(四国の1/3に相当する面積)が酪農のための牧草地にされたということです。こうした牧草地を造成するには通常、木々を伐採しなければなりません。そして野生のマヌカの木々も、牧草地造成のため伐採されてしまいました。
牛乳・粉ミルクその他の乳製品に対する需要が中国で高まっています。この需要に応えるため、牧草地の造成が続いています。
中国はニュージーランドにとって2番目の貿易相手国で、2012年の対中国輸出額は67億NZ$でした(これは2008年輸出額の3倍以上です)。このうちおよそ1/3(22億NZ$)を乳製品が占めています。
ヘリコプターでしか近寄れない
牧草地を造成するのに最適なのは、平坦な、あるいは緩やかな起伏のある土地です。また道路に近く、トラックによる牛乳の集荷が容易な場所であることも求められます。
こうした土地に広がるマヌカ林を利用して巣箱を設置していた養蜂家は、新たな養蜂場所を求めざるを得なくなりました。
フロンティア・ヘリコプター社による養蜂家の
巣箱の移動。
YouTubeで複数のビデオ一覧が表示される場合は、画面左上のHelicopter Beehive Transport-Frontier Helicopters をクリックしてください。
Music: "Now We Are Free" by Various Artists。
マヌカの茂る土地に着陸したヘリコプター
フロンティア・ヘリコプター社Frontier Helicopters Limited は養蜂家の巣箱の移動を請け負う会社の一つです。フロンティア・ヘリコプター社の広告ビデオを見れば、ヘリコプターを利用した巣箱の移動が大々的に行われていることがわかります。
広告では「あなたの巣箱をどんなところにでも運びます」とアピールしています。また同社の輸送実績は年間5,000個であるが、一万個まで輸送できるとも述べています。
平坦な土地を確保できないため、養蜂家は非常に不便な辺境や、あるいは道路のないよう
な山岳地帯でマヌカの木を探さなくてはなりません。こうした場所にはヘリコプターでしか近寄れないような場所も多いのです。
そういうわけで、巣箱の移動のため、定期的にヘリコプターを利用する養蜂業者もいます。このヘリコプターによる輸送費用が、マヌカはちみつ製造コストを押し上げているのです。
情報更新:JCIがこの記事を公開したあとで、NZでは酪農業の拡大に歯止めがかかりました。酪農廃水が河川や湖沼に流入し、深刻な公害を引き起こしたためです。
マヌカはちみつの価格に影響を与える最大の短期的・季節的な要因が気候不順です。マヌカの開花期は1年のうちほんの数週間しかありません。開花期に多雨や旱魃が起きればみつの収穫量が減少し、価格が上昇します。
NZ政府は、マヌカ規制の最前線です。政府がマヌカはちみつの定義を導入したことで、大半のマヌカの価値が下がる一方で、製造現場では政府の規制に沿うための煩雑な手続きが加わることになりました。規制導入以前に「マヌカ」と呼ばれていた「標準/格付けなしマヌカ」は、現在では「多種混合マヌカ」と呼ばれるようになりました。これに伴い、こうした格付けの低いマヌカの値崩れが起きています。
気候要因以外に、マヌカの価格に近頃影響を与えているのが、最近急増しているオーストラリア産マヌカです。この「オーストラリア産」マヌカの大半は、もともとNZ産で、政府によるマヌカ定義の検査に不合格であったものであると見られます。こうしたマヌカは(小売り用ではなく)バルク品としてNZからオーストラリアに輸出されています(NZ政府によるマヌカの定義は、小売り用として瓶詰めされたはちみつにのみ適用され、ドラム缶や大きなコンテナに入れて輸出されるバルク品には適用されません)。2018年9月更新