常に変化する化学的世界

 

農業用化学物質をめぐる状況は日々変化しています。検査機関が分析対象とする化学物質のリストは定期的に見直され、追加されたり削除されたりしています。リストの変更は、新種の化学物質の創出を可能にする科学の進歩を反映しています。

既にある殺虫剤や除草剤に耐性を持つようになった昆虫や植物に対し、有効な農薬を作るために新種の化学物質が求められます。また従来の農薬は、さらに高い効果を持つよう改良されてゆきます。

 

弊社がはちみつの残留農薬検査を始めた時に選んだ、ヒル・ラボラトリーズのリストには127種類の化学物質が記載されていました。ここには、除草剤グリホサートは含まれていなかったので、グリホサートを追加しました。こうして、弊社製品のステッカーには「128種の農薬不検出」と記載されることとなりました。現在ヒル・ラボラトリーズは128種の物質をリストアップしており、ここにグリホサートを加えた129種について検査をしています。

 

ヒル・ラボラトリーズは、業界の状況の変化に伴い、随時リストの見直しを行うとしています。弊社では、ヒル・ラボラトリーズによる全バッチの検査結果をウェブサイトで公表しておりますので、お手元のはちみつで検査対象とされた全ての化学物質の正確な数と名前がいつでも確認できます。

 

2020年1月、NZ第一次産業省(MPI)による調査報告(NZ残留農薬プログラム報告:はちみつ中の農薬)(註1)が発表されてから、はちみつに残留するグリホサートの問題が大きく取り上げられるようになりました。

 

この報告書に記載のある、検査を行った化学物質474種という数字の有意性について、弊社はMPIに問い合わせてみました。474という数字はNZで使用されている農業用化学物質の合計数なのかと。答えはノーでした。この数字は、調査にあたり契約した検査期間で実施が可能な化学物質の数であるとのことでした(註2)。つまりMPIは、NZの検査機関の能力の及ぶ範囲内でのみ、検査を行ったということです。この検査では少数のサンプルでグリホサートの残留が認められましたが、残る473種の化学物質は検出されませんでした。

 

弊社の検査はいつも、グリホサートならびに最低でも5種類のネオニコチノイド系殺虫剤を対象としています。弊社がヒル・ラボラトリーズに発注している検査は、複数残留物セット第2(Multi-residue Suite 2)というもので、120種類以上の殺虫剤を調べるものです。この検査セットについてヒルズラボラトリーズは、はちみつの場合、商品をお買い上げ下さるお客様の安全を保障するのに最適であると述べています。弊社が専門とするのは、はちみつの輸入であり、科学研究については素人であることから、ヒル・ラボラトリーの見解に従い、この検査を実施しています。

Let's be honest

NZ産はちみつ製品の販売業者の中には、たった一種類の除草剤、つまりグリホサートについてのみ残留検査を行ったことを以て、「残留農薬フリー」を謳うものもいます。また「抗生剤不使用」を強調する業者もいますが、これもナンセンスです。NZではそもそも養蜂で抗生剤を使用することは認められていないからです。 


 

(1) New Zealand National Chemical Residues Programme Report

Results for agricultural compound residues in honey

New Zealand Food Safety Technical Paper No: 2020/02 | by New Zealand Food Safety | ISBN No: 978-1-99-000880-1 ISSN No: 2624-022X | January 2020

(2) New Zealand Food Safety OIA21-0067 19 February 2021

An ever changing chemical world | 2023.4.22