薬用植物

マヌカの木もカヌカの木も、資料として信頼されているNew Zealand Medicinal Plants(『ニュージーランドの薬用植物』)という書物で、薬用植物として紹介されています。

 

マオリの人々が、よく似たマヌカとカヌカを厳密に区別していたかどうかは明らかではありません(マヌカ・カヌカの特性についてはこちらをご覧下さい)。


マオリの人々は、背の高いカヌカを雄株、背の低いマヌカを雌株と考えていたという記述もあります。

ニュージーランドの薬用植物


未記録の歴史

マオリの知識は世代から世代へ、口承されてゆきました。マオリ語には文字がなかったからです。このため、マオリの習慣についての記録は、古代のものはもちろん、比較的新しい時代のものも残っていません。

 

マオリの習慣についての記録の大半は、19世紀初頭にNZを訪れたヨーロッパ人が残したものです。アザラシ猟や捕鯨に携わる人々、宣教師や入植者が、観察記録を英語で記しました。つまり、私たちはまずヨーロッパ人の眼を通じてマオリの習慣を理解するわけです。

 

初期の記録に、マヌカはちみつの記述は見あたりません。NZでマヌカはちみつが製造されたのは、ヨーロッパ人がみつばちを持ち込んだ19世紀末以降のことであり、またマヌカの効能が知られるようになったのは20世紀後半になってからでした。

樹皮と種

医療用としてのマヌカ利用の大半は、樹皮と種に限られていたようです。樹皮は通常、ゆで汁を飲んだり、ゆで汁の蒸気を吸い込んだりして、また種は噛んで用いられました。

 

ここで、『ニュージーランドの薬用植物』に記録があるマヌカの医療用途のあらましをご紹介します。この本ではマヌカとカヌカを同じ箇所に分類し、その利用方法を記しています(1)

  • マヌカの葉を湯船に入れ、その湯気を吸い込む。
  • 泌尿器その他の不調時、また熱がある時、葉を煎じて飲む。
  • 白く粘性のある樹液は火傷に塗布し、また鎮咳剤として成人にも
    子どもにも用いる。
  • 鎮静剤として、樹皮の浸出液を外用または内服する。
  • 風邪の際、葉を茹でてその蒸気を吸い込む。
  • 炎症(例えば胸部鬱血)を抑えるため、種の鞘を煎じ外用薬として用いる。
  • 乾いた傷・化膿した傷に、鞘を砕いたものを湿布として用いる。
  • マウスウオッシュやうがい薬として、樹皮の内側を煎じたものを用いる。
    (p. 171, 172)
  • 止瀉剤としてマヌカの種を噛む。
    (p. 41)

 次に示す例のように、マヌカの樹皮を、他の木の皮と一緒に用いることもあった。

  • トタラ(マヌカと同じく、ニュージーランド原産の木)とマヌカの内部樹皮を一緒に茹で、その液を瓶に入れて一週間寝かせるとほのかに甘くなる。これは解熱剤として用いられる。(p. 82)   
  • 鎮痛剤として、 コファイ(これもニュージーランド原産の木)とマヌカの樹皮の浸出液を背中や脇に外用、あるいは内服する。内部樹皮はかゆみに効く。皮膚病には、コファイとマヌカの樹皮の抽出液を木灰と混ぜて乾燥させたものをよくすり込む。打撲には、細かく砕いて熱湯に漬けた樹皮を用いる。(p. 151, 156)

「マヌカ」「カヌカ」の名称についてのメモ

マヌカの学名はLeptospermum scoparium。英名には「赤マヌカ」
「ティーツリー」というのもある。この木を指すマオリ語は、カイカトア、パタ、
ラウイリ、タラ・マヌカなどがある。カヌカの学名はKunzea ericoides 
英名には「白マヌカ」「木立マヌカ」というのもある(2)。

 

参考書目

(1)"New Zealand Medicinal Plants" (ニュージーランドの薬用植物). S. G. Brooker, R.C. Cambie, R. C. Cooper.  Reed Books, Auckland, NZ (1987).

(2)"Manuka, The Biography of an Extraordinary Honey" (マヌカ、この驚くべきはちみつの歴史). Cliff Van Eaton. Exilse Publishing, Auckland, NZ (2014).

 

 Medicinal plants | updated 2022.1.28