「非加熱はちみつ」の神話

お客様、このはちみつはもちろん非加熱でございます!

JCI / ピュアハニーダイレクトが輸入しているはちみつは「加熱処理」をしているかどうかという質問をよく頂戴します。はちみつはすべて加熱されているというのが正解です。巣みつ(コームハニー)でさえ「加熱」されています。

 

はちみつはまず巣の中で加熱されます。みつばちは巣内の温度をおよそ摂氏37度に温めています。この温度は、はちが飛ぶのに必要な暖かさ(みつばちは体温が35度以下になると飛べなくなります)であり、またはちの幼生が成虫になるために、そしてはちみつをはちが食べられるやわらかさで保存するために、この温度が必要なのです。

 

はちみつが次に加熱されるのは、パッキング工場です。通常パッキング会社は、養蜂業者からドラム缶に入ったはちみつを仕入れ、それを数ヶ月間保存しますが、その間にはちみつの結晶化が始まっていると考えられます。そこでパッキング会社は結晶化したはちみつを溶かすために加熱します。この工程ではちみつを濾過し、ミツロウの破片などの不純物を取り除きます。

軽々しく使われる表現

重要なのは、はちみつがどのくらいの温度で加熱されたか、そしてどのくらいの時間その温度が保たれていたかという点です。はちみつ販売会社では「非加熱処理」や「生」といった表現は軽々しく使いますが、実際はちみつが何度で加熱されたかという情報をめったに公開しません。

 

通常、大手はちみつパッキング会社は少なくとも天然の巣内の温度(37度)の二倍の温度ではちみつを加熱しています。大量のはちみつを短時間で濾過するには、高い温度で処理しなくてはならないからです。しかしその結果おそらくはちみつに含まれる有益なミネラルやビタミンが破壊されているものと思われます。

 

パッキング会社が使うフィルターの細かさも、何度で処理するかに関わっています。透明で、花粉やミツロウが全く混じっていないはちみつを作る会社は、200ミクロン(0.22mm)のフィルターを使用しているものと考えられますが、200ミクロンというのは人間の髪の毛の直径の三分の一(髪の毛一本の直径は88ミクロン)という細かさです。またパッキング会社のなかには、さらに細かい100ミクロンのフィルターを使用し、真空処理あるいは加圧処理ではちみつを濾過しているところもあります。

マイクロ濾過

マイクロ濾過プロセスを採用しているパッキング会社もあります。このプロセスではまずはちみつに水を加え、その後水分を除去するため珪藻土(DE)が用いられる場合もあります。こうすることで、結晶化を起こす微少な核までも除去できます。長い期間店舗に陳列しておいても、外観はずっと透明なはちみつを作ることを目的としてこうした処理が行われています。

 

大手とは対照的に、自前のパッキング施設をもつ養蜂業者は、大量のはちみつを短時間で処理する必要がないため、200ミクロンか300ミクロン、時には400ミクロンという目の粗いフィルターを使用しています。またこうした業者は、天然の巣内の温度以上ではちみつを加熱することはないようです。

 

はちみつに含まれる有益な天然成分、たとえば花粉、ミネラル、ビタミン、そしてマヌカのばあいには抗菌物質を損なわない製品を作ることに誇りと自信をもっているからです。

七つの意味

「生」という語には少なくとも七つの意味があります。食品に関連しては「調理されていない」「自然のままの」という二つがあげられるでしょう。「生」というラベル表示が特に合衆国では人気を博しています。販売会社や広告会社は、はちみつの宣伝文句として「生」をよく使います。しかし、これまでに述べてきたように、すべてのはちみつは、まずはみつばち自身により、次にパッキング会社により加熱されています。したがって「生はちみつ」という語は実は意味をなしていません。

「生」あるいは「非加熱処理」というはちみつ製品の表示は、真実を伝えていないと考えられます。「生」「非加熱処理」といった語は、巣内でみつを温める温度や、はちみつを濾過し容器に詰めるプロセスをきちんと反映したものではありません。特にマヌカはちみつには揺変性(かき混ぜることにより粘度が低下し、ほうっておくとまたもとの粘度に戻る性質)があるため、加熱しなければ濾過することは非常に困難です。

広い意味

もし「非加熱処理」や「生」といった語を文字通りの意味で使えないなら、もっと広い意味で使うことはできるでしょうか。 

 

広告業者や販売業者がすべて不誠実だと考えることもないでしょう。広い意味で、たとえばそのはちみつが純粋であるという意味、添加物が使用されていないという意味、有益なミネラルやビタミンがそのまま残っているという意味、そして高温で加熱されすぎていないという意味でならば「生」の語を使うこともできるでしょう(しかし製造のプロセスでは必ず加熱されています)。

 

「非加熱」のはちみつを食べたいという消費者がいる一方で、もしパッキング段階でまったく加熱・濾過されていないはちみつ、つまり結晶やミツロウのかたまり、花粉やはちの羽などのまじったはちみつを実際に目にされたとしたらどうでしょうか。そのはちみつには不純物がたくさん混入しているというクレームがつけられ、また購入されることもないでしょう。

 

一方でのどかな田園地帯に置かれた木製の巣箱というファンタジーがあり、一方で近代的なはちみつパッキング工場の現実があります。


出典

(1)「みつばちの熱の秘密があきらかに」テレグラフ紙 2010年3月13日(ロンドン)

“Honey bees secret world of heat revealed”, The Telegraph, London. 13 Mar. 2010.

http://www.telegraph.co.uk/news/earth/wildlife/7435950/Honey-bees-secret-world-of-heat-revealed.html

(3)The Honey Traveler のサイトでは「生」はちみつについて、よくまとめられた
概要がご覧になれます(英語)。

http://www.honeytraveler.com/types-of-honey/raw-honey/

 

全国はちみつ公正取引協議会では、はちみつのラベルに「生」という文言を使用しない

よう勧告しています。同協議会による、はちみつ類の表示に関する公正競争条約では
次のように記載されています。

 

“はちみつに「純粋」、「天然」、「生」、「完熱」、「ピュア」、「ナチュラル」、

 「Pure」、「Natural」その他これらと類似の意味内容を表す文言を

表示しようとする場合には「純粋」又は「Pure」という文言に統一して

行わなければならない。”

「はちみつ類の表示に関する公正競争規約、第四条(1)」。

 

The myth of unheated honey | updated 2022.3.5