Use in Medical devices


マヌカはちみつが持つ独自の抗菌効果や治療効果は、ひきつづき多くの医学研究の対象となっています。マヌカを内服薬として認めている国はありませんが、たとえば創傷被覆材としての使用や、傷の手当て用クリームやジェルに入れるなど、医療用品として用いている国はいくつかあります(註1,2)

 

医療用品とは、主として外用のもので、予防・検査のため、あるいは傷の手当てや症状の緩解を目的として利用されます(註3)

 

FDAに認可
特筆すべきは、2010年、合衆国食品医薬品局が、マヌカを成分とする医療用品の流通を認可したことです(註4)。マヌカが最初に医療用品として登録されたのはオーストラリアで、1999年のことでした(註5)

 

医療用品に使用されるマヌカはちみつはニュージーランド産(オーストラリアの場合もある)ですが、傷用クリームなどの製品は、はちみつにガンマ放射線を照射できる設備を持つ国で製造されているものと考えられます。ガンマ放射線を照射するのは、はちみつに含まれうる、クロストリジウム胞子(この胞子がボツリヌス菌を生じさせるおそれがある)を死滅させるためです。

 

 遺伝子組み換え

ガンマ照射は、ニュージーランドのような国ではひじょうに慎重な対応が必要な問題です。なぜなら、ニュージーランドでは国内産・輸入品ともに、遺伝子組み換え(GM)をしない食品を推進するのが政府の方針だからです。はちみつにガンマ放射線を照射すすることで、はちみつのDNAが改変されます(註6)。したがってこの領域を取り扱う企業やラボの業務内容は秘匿されています(註7)

 

したがって医療用品としてガンマ放射線を照射された「医療品グレード」のマヌカは、ニュージーランド国内では食品として流通させることはできません。放射線照射されたはちみつが天然のものではないことはあきらかだからです。

 

ですから小売り用のマヌカはちみつで「医療品グレード」として宣伝されているものは、真正なものとは言えません。とはいえ、マヌカ医療用品を製造しているデルマ・サイエンス社Derma Sciences(合衆国)の場合、原料となるマヌカはちみつは、最低でもUMF10+のグレード(またはメチオグリサール含有量が1キログラムあたり263ミリグラム以上)の基準を満たすことを求めていることは事実です。

 

 50ミクロンのフィルター

傷の手当てに用いられる「医療品グレード」のマヌカには、UMF値以外の条件が課されます。たとえばはちみつを濾過する際に50ミクロンの細かいフィルターを用いることです。一方JCIが取り扱っているモソップやタヒ・エステートでは、200ミクロンという目の粗いフィルターを使用しています。目の粗いフィルターで濾過することにより、できあがったはちみつには、健康に寄与する花粉や微量のプロポリスが残るのです。

 

ここまでお読みになれば、傷の手当てに用いるマヌカ製品の製造と規制に関して、合衆国とオーストラリアが大きな役割を担っていることに気づかれるでしょう。

医療機材を殺菌するガンマ放射線源は、放射性同位体コバルト60という物質です。


弊社がさらに調査を進めたところ、英国とオランダの企業もこの領域での存在感が大きいことがわかりました。

 

ニュージーランド国内で獣医療用のマヌカ医療品を製造しているメーカーに問い合わせ、ガンマ放射線照射のためにはオーストラリア国内のラボを「利用せざるを得ない」のか、それともいくつかの選択肢からオーストラリアを「選んでいるのか」をたずねたところ、「利用せざるを得ない」(つまりニュージーランド国内では不可能)との回答を得ました。

 

ニュージーランド国内でマヌカはちみつにガンマ放射線照射を行っているとは考えられません。ニュージーランドではたしかにマヌカはちみつを生産しており、そしてピーター・モラン博士(マヌカ研究の父と呼ばれている、微生物学の専門家)はニュージーランド国内で研究を行いましたが、それでも「医療品グレード」というマヌカは、ニュージーランドのものではありません。

 

傷の手当

モラン博士の研究によれば、傷の手当にマヌカを利用することの利点として次のような点を指摘しています。 

(1)傷口をきれいにする 

(2)傷口の炎症を抑えることですみやかな回復をうながす 

(3)他の療法では快癒しない潰瘍を治す (4)植皮に適した創傷床を形成する

(5)従来の療法に比べ傷跡が目立たない (6)傷口の悪臭を抑える(註8)

 

モラン博士は時代にさきがけて、マヌカはちみつの最大の役割は、抗生物質に耐性のある細菌により引き起こされた炎症の手当であると見抜いていたのでしょう。

 

他のはちみつの品種

ただし、はちみつを利用した医療用品すべてにマヌカはちみつが用いられているわけではありません。たとえばデルマジェニックス社Dermagenics (合衆国)では蕎麦のはちみつを、タウレオンNL社Taureon NL(オランダ)ではチリ産百花蜜を利用し、トリティカムエクスプロイタティBV社Triticum Exploitatie B.V社(オランダ)は蜜源を公開していません(註9)


また医師達が傷の手当て用として、最初にマヌカを選ぶことはあまりなく、マヌカは製薬会社の医薬品が効かない場合に利用されていると考えられます。そうではあっても、マヌカの効用があきらかになったのは比較的最近のことですから、今後医療用品として、さらにマヌカが活用されることが期待できます(註10)



脚註

(1) 合衆国、英国、オーストラリア、ニュージーランドでの例です。厚生労働省によれば、日本国内ではマヌカはちみつを成分とした医療用品はまだ認可されていません。

(2) manuka honey as a wound dressing + image でインターネット検索をすると、たくさんの写真がごらんになれます(日本語で、たとえば「マヌカ傷口」等をキーワードにしてイメージ検索した場合には、医療用品はほとんど見当たりません。日本国内では認可されていないためです)。

(3) http://www.who.int/medical_devices/full_deffinition/en/

(4) 合衆国食品医薬品局(FDA)は2010年2月、医師が次の症例に傷用マヌカを使用することを認可しました。適応症:足の潰瘍、褥瘡、1度~2度の火傷、糖尿病性足部潰瘍、手術創傷、外傷性創傷。軽度の擦り傷、裂傷、軽度の切り傷、軽度の火傷の手当用として、薬局等での市販の医療用品が入手可能です。

(5)  “Honey: a sweet solution to the growing problem of antimicrobial resistance?” Maddocks S.E. & Jenkins R.E. Future Microbiology (2013).

https://www.futuremedicine.com/loi/fmb

(6) 「(・・・)ガンマ放射線を照射された物質内では電子が分裂する。生体の細胞にガンマ放射線を照射した場合、この電子の分裂によりDNAが傷つけられる(・・・)」ステリス社STERIS Corp(合衆国)のウェブサイトより抜萃。同社は医療用品の殺菌を専門に行っています。

(7) JCIが傷用マヌカ医療用品のメーカーに対しガンマ放射線照射について問い合わせたところ、各社とも回答を拒否しました。この件が取り扱いに注意を要する話題であることに鑑み、JCIの人脈を通じ獣医療用のマヌカ医療品メーカーに問い合わせ、ここにご紹介した知見を得ました。

(8) “Why honey is effective as a medicine” by Peter C. Molan. Bee World (1999).

(9) これはモラン博士による2012年のコメントで、現在とは状況が異なることもあります。

(10) はちみつは何百年にもわたり、傷の手当に用いられてきました。はちみつが医療に用いられてきたことは、古代エジプトの記録、たとえば紀元前17世紀のエドウィン・スミス・パピルス(外傷手術に関する書物)からもわかります。傷治療用に用いられるマヌカはちみつの効用については、ワイカト大学のピーター・モラン博士の功績に負うところが大きいでしょう。モラン博士は純度の高いマヌカはちみつには、未知の抗菌力があり、炎症を起こすタイプの傷の大半に、局所的に使用できることを発見しました。