液状と結晶状のはちみつ

液状のはちみつ

みつばちが作るはちみつは、通常は液状です(マヌカはちみつを除く。マヌカはちみつは、みつばちが作るときからゲル状で、液状はちみつはありません)。

 

時間が経つにつれ、液状はちみつ中に自然に小さな結晶ができます。この現象は容器入りのはちみつを放置していた場合に観察されます。

底の方に白い塊ができてしまったはちみつは、見よいものではないかもしれませんが、その一方で結晶化が始まるというのはそのはちみつが天然であることの一つの証でもあります。パッキング会社で水を加えていたり、高熱処理で損傷を受けていたりすると、このような結晶化は見られません。

天然の結晶化は、ニュージーランド(以後NZと表記)ではめったに問題になりません。はちみつを買って、食べきるまでの期間が短いからです。ところが日本の場合、ひとつのはちみつを半年から一年、あるいはそれ以上の期間、保管される場合があります。このような長期間にわたる保管の結果、天然・純粋なはちみつであれば、容器の底の方から次第に結晶化がすすんでゆくことがよくあります。

液状はちみつで結晶化が始まったとしても、食べることには何の差し支えもありません。もし結晶が気になるようなら、はちみつを加熱すれば結晶は消えます(その場合、37度を超えないようにしてください。これは自然の状態での巣内の温度です)。

クリーム状はちみつ

「クリーム状はちみつ」とは、液状はちみつが簡単に分離してしまうのを防ぐため、液状はちみつを人工的に結晶化させたものを指します。パンを主食とする国々でよくあるタイプのはちみつで、100%天然の食品です。

 

クリーム状はちみつを作るには、10℃~15℃という低い温度で処理が行われます。しかし一般の家庭や店内の温度は、たいていの場合年間を通じておよそ20℃あるいはそれ以上になります。 

 

20℃を上回るような温度でクリーム状はちみつを保存すると、柔らかくなり、容器上部から(つまり結晶化の時とは反対に)液状に戻りはじめます。この場合でもはちみつの風味は失われず、問題なく召し上がれます(右側下の写真が、液状に戻りつつあるクリーム状はちみつです)。またクリーム状はちみつは、屋内の温度の低い場所で保管していても、時間とともに柔らかくなってゆきます。

 

クリーム状はちみつの液状化も、NZではめったに問題になりません。やはり、購入から食べきるまでの時間が短いからです。またはちみつを保管するには、気密性の高い容器に入れ、ガス台やオーブン、直射日光の当たるところなど、高温になりやすい場所を避ける必要があることは広く知られています。

もしクリーム状はちみつの液状化がはじまった場合、かき混ぜてから一晩、冷蔵庫に入れてください。ただし一日以上冷蔵庫に入れていると、はちみつの風味が失われてしまいますのでご注意ください。あちこちに垂れがちな液状はちみつとは違い、クリーム化されたはちみつはスムーズでなめらかな質感が特長です。そして高い技術で処理されたクリーム状はちみつには、真珠のような美しい光沢があります。これは、極小の結晶(0.025mm)が、均一な渦巻き状で光を反射するからです。

 

平均的なNZの家庭のパントリーには、必ず一つや二つのはちみつが常備されています(NZの人々は、一人あたり年間2キログラムのはちみつを消費します。日本の一人あたり消費量の5倍にあたります)。

オタゴ・ハニーの野の花はちみつ。容器下部から結晶化が始まっているのがわかります。この状態でも、はちみつの風味は失われておらず、おいしく召し上がれます。

ガラス・ブラザーズのカマヒはちみつ。容器上部から液状化が始まっているのがわかります。保存場所の温度が高いときにこうなりがちです。しかしこれが、天然のはちみつである証です。この状態でもはちみつの風味は保たれており、おいしく召し上がれます。


マヌカなど医療用のはちみつを除き、NZでは、はちみつは主に朝食の食材です。一日の始まりにあたり、エネルギー源としてトーストに塗って食べます。学校給食のサンドイッチには、デザートとしてはちみつサンドがついてきます。

もちろん、これ以外にもはちみつの楽しみ方はいろいろあります。通の食べ方もあれば、ベーカリーなどで使用されることもあります。とはいえ、たいへん大雑把に言うなら、NZのはちみつの70%は朝食時に消費され、またその大半はトーストに塗るという食べ方をされています。

日本のスーパーマーケットではシーフードがたいへん充実していますが、NZの標準的なスーパーマーケットに行けば、パンの種類がとても多いことに気づかれるでしょう。NZで一年間に消費する小麦粉は、一人あたり約190キログラムにもなりますが、これは日本の小麦粉消費量のおよそ4倍です。

 

このような食文化を顧みれば、NZのはちみつ会社が1930年代という早い時期から、トーストに塗りやすいクリーム状はちみつの開発に努めてきた理由がわかります。人工的に結晶化させるには、はちみつを攪拌してから冷やすという方法が採られました。

 

クリーム化には、ごく少量のすでに結晶化したはちみつ以外には、何も添加しません。クリーム化されたはちみつは、今日ではNZで販売されるはちみつの80%を占めると見られています。

結晶化の傾向

はちみつの主成分はブドウ糖、果糖、水分で、そのほかに各種の酸や糖、ミネラルやタンパク質も含まれています。主成分のブドウ糖・果糖・水分の組成比が、はちみつ結晶化の傾向を左右します。

 

通常、ブドウ糖含有率が高いほど結晶化が早く進み、果糖含有率が高いと、結晶化はゆっくり進みます。たとえばクローバーはちみつは結晶化が遅く、ラタは速やかに結晶化します。大量に販売されている、淡泊でゆるいはちみつが結晶化しないという場合には、そのはちみつが水で薄められていることもあり得ます。


Liquid and crystallized honey | updated 22.2.19