Food fraud on a global scale


学術研究によれば、食品偽装で三番目に多いのが、混ぜ物で品質を落としたはちみつです。

 

ミシガン州立大学(MSU)食品偽装防止戦略チームFood Fraud Initiative Team of Michigan State Universityの論文によれば、食品偽装食品のワースト3はオリーブオイル、牛乳、はちみつ(はちみつはコーンシロップを混ぜた偽装品が多い)で、4位以降にサフラン、オレンジジュース、コーヒー、アップルジュース、ワイン、メイプルシロップ、バニラ抽出物が続きます。(註1)                                           

 

この研究結果はMSUが1054の論文を分析して得られたものです。同時期にMSUが行った、報道および査読なし研究の分析では、はちみつの偽装はすべての食品中二番目に多い(最も多いのが魚類、三番目に多いのがオリーブオイル)ということがわかりました。

 

古代から止まない食品偽装

近年の書籍や報道では偽食品にスポットライトが当てられることが多い(たとえば馬肉がハンバーガー用パテとして流通したEUのケース、木材由来のセルロースを混ぜたパルメザンチーズが販売されていた合衆国のケースや、「神戸牛」の詐称など)、食品偽装の歴史は古代までさかのぼることができます。

 

古代ローマにおけるオリーブオイルやワインの偽造については、数多くの学問的研究があります。古代ローマにおいても製品の虚偽表示がありました。たとえばオリーブオイルやワインの容器に虚偽の封印をしたものが発見されています。

 

英語圏では1820年まで、食品偽装が組織的に行われ、蔓延しているということが意識されていませんでした。この認識を変えたのが、英国在住のドイツ人科学者フリードリヒ・アクームFriedrich Accum が1820年に発表した、Treatise on Adulterations of Food, and Culinary Poisons(食品偽造と食中毒についての考察)という、大きな影響力を持つ研究でした。

 

この研究の中でアクームは、パン、ビール、ワイン、蒸留酒、茶、コーヒー、クリーム、酢、からし、胡椒、チーズ、オリーブオイル、漬け物その他当時英国内で販売されていた食品に見られる「巧妙な詐欺の手口」を明らかにしました。

 

巧妙化した手口

アクームの時代から200年の間に、経済的動機から食品偽装は大規模化し、またテクノロジーの進歩により、偽装や詐欺の手口も19世紀とは比べものにならないほど巧妙化しました。

 
ところが各国政府は最近まで、食品偽装が深刻な犯罪であると見なしてはいませんでした。こののんきな見方を変えたのが、二つの食品偽装事件です。まず2008年中国で、乳児用粉ミルクにメラミンが混入していたことが判明しました。実際にこのメラミン混入ミルクを飲んで死亡した乳児もいます。


そして2012年EUで、ハンバーガーその他に馬肉が使われていることが判明しました。こうした肉を食べた人は命に関わる危険があることも指摘されました。†

 

英国は馬肉スキャンダルを受け、2014年に国家食品犯罪対策部National Food Crime Unitを設置しました。一方合衆国当局は違法ドラッグ対策で手一杯であり、食品偽装対策にまで手が回らない状態であるといわれています。

インターポール(国際刑事警察機構)は2014年12月から2015年1月にかけて、47カ国の空港、港湾、量販店や小売店で大量の偽造食品を押収しました。この時インターポールが押収したのは、2,500トンの偽造食品と275,000リットルの汚染された飲料でした。

 

1,200トンの偽造食品

押収された偽造食品は、モッツァレラチーズ、卵、ミネラルウォーター、いちご、料理用の油、ドライフルーツなどです。タイム誌によればその1年前にも、インターポールが33カ国で1,200トンの偽造食品を押収したとのことです。(註4)

 

(「食品偽装問題」でオンライン検索をした結果、日本には食品偽装に対する認識がまだまだ低いことがわかりました。)(註5)

 

大海の一滴

歴史的背景および現状に鑑みれば、偽マヌカの問題は大海の一滴にすぎないことがおわかりいただけたことでしょう。マヌカ詐欺を撲滅するのは、偽オリーブオイルの撲滅と同じくらい困難なことです。

 

オリーブオイルについて、トム・ミューラーは「偽造はいまだに、国際的な問題である(・・・)オリーブオイルは、その他のオイルよりも価値が高いが、製造コストが高く、
また製造にも時間がかかる。そして不正加工するのがおどろくほど容易なのだ」と述べています。(註6)このミューラーの見方は、マヌカはちみつにも当てはまるでしょう。

 

ニュージーランドのような小国が、一国だけで規制をしたところで、地球規模で行われる食品貿易に大した影響があるとは考えられません。 

 

コピー商品の輸入

また、東京税関には高級ブランドや有名デザイナーのハンドバッグその他のコピー商品の輸入に対する警告ポスターが貼ってありますが、税関が偽マヌカ輸入について、コピー商品輸入と同じくらいの熱意をもって対処することも期待できないでしょう。



おぼえがき

ウマに使用されるフェニルブタゾン(抗炎症剤)による健康被害の恐れ。
フェニルブタゾンは人間の食品に混入することを禁止されている。

 

参考文献

(註1)“Development and Application of a Database of Food Ingredient Fraud and Economically Motivated Adulteration from 1980 to 2010”. Jeffrey C. Moore, John Spink, Marcus Lipp. Journal of Food Science. Vol. 77, Nr. 4, 2012. (This research was based on analysis of scientific journal articles published from 1980-2010.) 

 

「邦訳なし/1980年から2012年にかけての食品成分偽装、および経済的理由による偽装に
ついてのデータベース」Journal of Food Science. Vol. 77, Nr. 4(食品科学ジャーナル第77巻)

 (この研究は、1980年から2012年出版された科学ジャーナルの論文の分析に基づく
ものである)

 

(註2)Swindled: The Dark History of Food Fraud, from Poisoned Candy to Counterfeit Coffee.
Bee Wilson. Princeton University Press (September 8, 2008).

「食品偽装の歴史」白水社) (邦訳:ウィルソン(著)高儀進(訳)(2009

 

関連項目

"Fake Food Scandals - A Bad Year For Food Lovers". Larry Olmsted. Forbes. July 11, 2016.

「邦訳なし/偽装スキャンダル:食の愛好家にとっての厄年 」ラリー・オルムステッド。

Forbes誌2016年7月11日号記事。

 https://www.forbes.com/sites/larryolmsted/2016/07/11/fake-food-scandals-a-bad-year-for-food-lovers/#24391617e75b. 2018年7月3日閲覧

 

Real Food / Fake Food: Why You Don't Know What You're Eating and What You Can Do About It.
Larry Olmsted. Algonquin Books, 2017.

  「邦訳なし/ 本物の食品/偽物の食品:あなたが何を食べているかを、そしてそれをどう

すべきなのか、あなたは知らない」ラリー・オルムステッド。Algonquin Books, 2017.


Wine: A social and cultural history of the drink that changed our lives. Rod Phillips. Infinite Ideas,

March 26, 2018.

  「邦訳なし/ワイン: 生き方を変えた飲み物の社会的・文化的歴史」ロッド・フィリップス。

Infinite Ideas, March 26, 2018.

 

(註3) A Treatise on Adulterations of Food, and Culinary Poisons. Frederick Accum.

Fili-Quarian Classics (Reprint edition. July 12, 2010; first published 1820).

  「邦訳なし/食品偽造と食中毒についての考察」

 

(註4) “2,500 Tons of the Food We Eat is Fake”. Mandy Oaklander. Time. February 17, 2015. 

 「邦訳なし/我々が食べている食糧のうち2,500トンが偽物」マンディ・オークランダー。

Time誌2015年2月17日号記事 

http://time.com/3711938/food-fraud-interpol/ 2018年7月4日閲覧

 

(註5) “Japan's menu scandal leaves a bitter taste”. Justin McCurry. The Guardian.

November 12, 2013.

 「邦訳なし/日本の食品スキャンダル、その苦い後味」ジャスティン・マッカリー。

The Guardian紙2013年11月12日記事

 https://www.theguardian.com/world/2013/nov/12/japan-menu-scandal-diners-duped.

 2018年7月4日閲覧

 

(註6) “Olive Oil's Dark Side”. Tom Mueller. The New Yorker. February 7, 2012.

「オリーブオイルの暗い側面」トム・ミューラー。The New Yorker誌2012年2月7日記事.

https://www.newyorker.com/books/page-turner/olive-oils-dark-side. 2018年7月3日閲覧